春の猟犬

The Hounds of Spring

オリジナル
グレード:
09:15
最終更新: 2025年10月13日

作曲者・編曲者

解説

《春の猟犬(The Hounds of Spring)》は、1980年にアメリカの作曲家アルフレッド・リード(Alfred Reed)が作曲した、吹奏楽のための演奏会用序曲です。
この作品は、カナダ・ウィンザーのコンサートバンドおよびその指揮者からの委嘱・献呈を受けて作曲され、1980年5月8日にリード自身の指揮で初演されました。

作曲の着想には、イギリスの詩人アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーン(Algernon Charles Swinburne)の詩「キャリドンのアタランタ(Atalanta in Calydon)」に登場する一節 “When the hounds of spring are on winter’s traces” が影響を与えたとされています。 リードはこの詩の中に描かれた「若さあふれる活力」と「優しい恋の気配」という二つの要素を、伝統的な三部形式(A-B-A型)の構造で音楽的に表現しました。

春の猟犬が冬の足音をたどる頃
月の女神が牧場で草原で
暗がりを、風吹く場所を
葉音、雨音で満たす

微笑み隠す唇ほど柔らかな
木々の茂みを陽気に分け入り
追い求める神々の目を逃れ
かの乙女は身を隠す

この作品は、8分の6拍子を基調とする躍動的な“急”の部分と、4分の4拍子による穏やかな“緩”の旋律を対比させた「急-緩-急」構成を持ち、リズムと旋律の対照が非常に鮮やかです。 編成は標準的な吹奏楽で、木管・金管・打楽器が豊かに使われ、春の訪れを象徴するような明るく華やかなサウンドを作り出しています。

作品の魅力

《春の猟犬》の魅力は、“春の息吹”を感じさせる生き生きとした音楽表現にあります。
冒頭では、まるで春の野原を駆け回る猟犬たちのようなエネルギッシュな主題が展開され、軽快で弾むようなリズムが印象的です。

中間部ではテンポが落ち着き、柔らかな旋律が登場します。木管や金管の温かみある響きが織り重なり、恋の予感を思わせるようなロマンティックな雰囲気を醸し出します。
再び後半に入ると、再現部とコーダに向かってテンポと音量が高まり、華やかなクライマックスを迎えます。終結部の輝かしい響きは、まさに春の喜びを全身で表現するようです。

技術的には、変拍子の切り替えやリズムの正確さ、アンサンブルの一体感が求められる作品であり、演奏者の集中力と表現力が試されます。

演奏のポイント

演奏では、冒頭と終盤の「急」パートの勢いと切れ味、そして中間部の穏やかな部分の対比を明確に描くことが大切です。
拍子の変化(8分の6拍子と4分の4拍子)を自然に感じ取るリズム感が必要であり、全体の流れを途切れさせないことが求められます。
また、強弱の幅を大きく取り、春の生命力を感じさせるような表情づけを意識すると、作品の魅力がより際立ちます。

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