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青い水平線

Blue Horizons - Three Symphonic Sketches

オリジナル
難易度:
最終更新: 2025年9月20日

作曲者・編曲者

作曲: フランコ・チェザリーニ(Franco Cesarini)

解説

「青い水平線」は、2003年にスイスの作曲家フランコ・チェザリーニによって作曲された吹奏楽のための作品です。 もともとはファンファーレバンドのための「Abysses, Op.23a」を基にしており、吹奏楽版ではソロ楽器の変更やエンディングの改変が施されています。 演奏時間はおよそ15分、3つの楽章から成り立ち、基本的には休みなく続けて演奏されます。

第1楽章:Luminescent Creatures(発光生物) 深海1000メートルを超える暗黒の世界を舞台に、光を放つ生物たちが織りなす幻想的な光景を描写しています。 静謐でありながら神秘的なサウンドが中心で、淡い光が闇に浮かび上がるかのように音楽が展開されます。 透明感のある和声、繊細なソロ、弱奏のバランス感覚が問われる楽章です。

第2楽章:Leviathan against Kraken(リヴァイアサン対クラーケン) マッコウクジラ(リヴァイアサン)と伝説の海獣クラーケンとの壮絶な戦いを音楽で描いた楽章です。 冒頭から緊張感あふれるリズムと不協和な響きが続き、クライマックスに向けて激しさを増していきます。 ベンジャミン・ブリテンのオペラ『ピーター・グライムズ』の間奏曲「嵐」に通じる劇的な要素を持ち、海の荒々しさや巨大な生物同士の衝突をイメージさせます。 演奏者には鋭いアーティキュレーションやリズムの正確さ、大音量と静寂の対比表現が求められます。

第3楽章:The Blue Whale(シロナガスクジラ) 地球最大の生物であるシロナガスクジラを主題とし、雄大で悠然とした姿を描いた楽章です。 広大な海を泳ぐクジラの存在感を豊かな和声と大きなフレーズで表現しており、穏やかで叙情的な響きが特徴です。 中間部および終盤には実際のクジラの鳴き声の録音が挿入され、自然との一体感が高められています。楽曲は壮大なクライマックスを築きつつも、静かな余韻を残して終結します。

本作は、単なるプログラム音楽を超えて「自然界と人間の想像力を結びつける交響詩」ともいえる位置付けを持っています。 演奏難度は「高度」とされ、技術的な挑戦に加え、深海の神秘、嵐の激しさ、そしてクジラの雄大さといったコントラスト豊かな表現力が要求されます。 そのため、上級吹奏楽団の演奏会やコンクールの自由曲として取り上げられることが多い作品です。

演奏上の注意点(青い水平線)

全体 ・3楽章が切れ目なく続くため、楽章ごとの雰囲気転換を明確に意識すること。 ・ダイナミクスの幅が非常に大きいため、弱奏(pp)のコントロールと大音量の迫力の両立が重要。 ・テクニック以上に「音色の描写力」「場面転換の説得力」が問われる作品。

第1楽章(Luminescent Creatures) ・神秘的な雰囲気を損なわないよう、弱奏の均一な響きを意識する。 ・木管のソロは透明感を大切にし、ビブラートを控えめにして「光の揺らめき」を表現する。 ・テンポの揺れやリタルダンドに敏感になり、指揮者の細やかなニュアンスを汲み取ること。

第2楽章(Leviathan against Kraken) ・急速なリズムの掛け合いでは縦のラインを正確に合わせ、粗雑にならないよう注意。 ・打楽器はリズムの推進力と劇的効果の要となるため、音量だけでなく音色の選択にも工夫が必要。 ・フォルテシモでは金管が主導する場面が多いが、全体のバランスを崩さないようにする。 ・激しい部分の後に訪れる静寂との対比をより鮮明にすると、戦いの描写が立体的になる。

第3楽章(The Blue Whale) ・クジラの鳴き声の録音と合奏の音量バランスに注意。録音が埋もれないようにする工夫が必要。 ・大きなフレーズ感を意識し、個々の音ではなく「旋律全体が悠然と歌う」イメージで演奏する。 ・クライマックスでは金管や打楽器に頼りすぎず、木管・低音群を含めた総合的な響きを作る。 ・最後の静かな終結は音を残さず「消えていく」ように仕上げると効果的。

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